東日本大震災と福島原発問題について

 この3月11日にマグニチュード9.0という日本の歴史上未曾有の巨大地震が発生しました。震源地は三陸海岸沖100km程の海底下で、南北400kmに及ぶ広域の領域で地殻プレートの破壊が起きたとされています。東京でも震源地より400km以上離れていたのにも関わらず大きな地震波が到来し、震度5を越える大きな揺れが観測されました。今回の地震で特に大きな被害を被ったのは海岸線沿いの地域で、地震で発生した高さ10m を越える巨大な津波によって、根こそぎ押し流され壊滅した市町村がたくさんでました。その犠牲者の数は、行方不明者も含めると、既に2万3千人を越えています。
 まず、この震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、そのご家族や、現在も厳しい避難生活を続けられている被災者のみなさんに心からお見舞い申し上げます。また、過酷な条件の中で復旧活動に携わっている皆さんに励ましの声援を送りたいと思います。
 この地震で被災した福島県の海岸線には、東京電力の原子力発電所がいくつかありました。そのうちの一つ、福島第1原子力発電所では地震が発生 したとき3基の原子炉が運転中でしたが、地震が起きてすぐ安全装置が自動的に起動して原子炉は停止しました。しかし、1時間後に到来した大津波により非常電源が使用不能となり、燃料棒から発生する余熱をとって原子炉を冷却することができなくなりました。このため高温になった燃料棒と水との反応で水素ガスが発生し、その爆発により原子炉建屋が破壊され、破損した燃料棒の中から放射性物質が大量に外界に放出された考えられています。福島第1原発の周辺地域だけでなく、福島を取りまく各地でも異常な放射能が検出され、深刻な社会不安をまきおこしています。まだ事故は治まる気配はなく予断を許さない状況にあります。
 東京大学の駒場キャンパスで前期課程教育を担当している私達物理部会の教員も、物理学の一般教育に携わっている者として、この原発事故の推移を憂慮して見守ってきました。私達はもとより原子炉工学や放射線障害の専門家ではありませんし、事故の実態も公表されている以上の情報はもちあわせていません。事故の真相についてはこれから時間が経つにつれて少しずつ明らかになっていくでしょうし、収拾策については正確な情報に基づいて専門家によって責任をもって練られていくことを期待したいと思います。
 私達の願いは、日々報道されている事故の進展状況や、放射能汚染の問題が、科学的に可能な限り正確に理解、認識されることです。そのために物理の立場から大切なのは、原子炉の物理と放射能の物理に関する基礎知識です。以下のリンクはこれらに関する物理部会の有志による解説です。この深刻かつ複雑な社会的問題を、根拠のない風評に惑わされず、科学的に考える一助となれば幸いです。

原子炉の物理 (文責:松井哲男)

放射線の物理および生体への影響(文責:鳥居寛之、澁谷憲悟)